丸の内魔法少女ミラクリーナ
タイトルに引かれたけど、その著者を見て意外で驚いたので、反射的に購入してしまった一冊。 ※勝手なイメージです。
日々のストレスをごっこ遊びで受け入れ、表に出さない主人公が素晴らしい。
一見おかしいようでいて、立派なストレス昇華手段だと思う。
現実社会を生きていて、さまざまな理不尽を正面から受け止めるのはあまりも痛い。
それを空想や別の自分になりきることで正面から立ち向かわずに迎えることは、良い戦い方だし一種の手だ。
人には人の捉え方や解決の方法がある。他人に迷惑をかけなければ、(自己完結していれば)それがどんなものでも良いんじゃないかなと思う。
ただ、レイミの彼氏は主人公に無茶振りをされたことで、ストレスを他者を巻き込む「偽善」で昇華し始めた。これは自分に酔って怒りを撒き散らしているだけで、全て自分のため。
という以前に思考や行動がクズすぎたけど・・・
子供の頃の素直できれいな「善」を信じる心を大事なものというレイミに純粋さを感じた。また二人の関係性にノスタルジーを感じ、感極まってしまった。
倫理観を問うのにコミカルな雰囲気が読みやすく、とても良かった。
本作は短編集だが、表題が一番好き。
「秘密の花園」
理想と現実のギャップを埋めるために汚い現実を直視しようとする主人公。その発想の異常性に目が離せない。
「無性教室」
性が自由になった世界の話。最終的に交わることをせずにパートナーになるとしたら、何を友情、何を恋と呼ぶのだろうか。
筆者は「恋」という感覚をとても純粋できれいなものとして捉えている気がする。恋は最終的に性欲に繋がっているのではないのかな。愛と欲望についての哲学的な問いかけに感じた。
「変容」
これな。という感覚以外何ものでもなかった。(本編に乗じて)
主人公のうらしまたろうっぷりについてはジェネレーションギャップで覚えがあるし(本編は世代関係ないけど)、その中で仲間に出会えたときに感じる高揚感についても共感できる。
なにより最終的に感情が言葉にハマったときの、それしか言えない感じがよく分かる。
(私語彙力ないので・・・w)
第3者の視点である読者からみると、とても異常で狂ったような場に見えたけれど、現実世界には実際にこういった「創り出された」ものがないとは言い切れないところが、恐怖心を煽ってエグかった。
著者の現実とSFの隙間のような世界観と、現実社会への風刺とまでは行かない投げかけが好き。
短編にこんなに問いかけを詰め込めるってすごい。
著者の本は他に2冊ほど購入済みなので、ゆっくり丁寧に読んでいきたい。