社会人の読書感想文

読んだり聞いたりした本の感想などを自由にかいてます。

かがみの孤城

かがみの孤城

辻村深月

 

有名な作品で一度読んでみたいと思っていた作品。

・・・だが、積んでいた・・・

※下記参照

siopan-book.hatenadiary.jp

 

今年アニメ映画として放映されており、やばい、これは社会的にネタバレOKになっていく流れ・・・と思って急いで読もうとおも・・・

思って半年以上経ってるんだけど、やっと読んだ!!!

全年齢向けな感じだったので言葉も優しく、展開も面白いし大変読みやすくて、1日で上下巻読破してしまいました。

 

中学生の、学校と家しか「世界」がない感じが懐かしく、そこでうまくやっていけない絶望感が共感とともに切なかった。

主人公は、特に女子特有のヒエラルキー的な見えない上下関係で、上の子から何も悪くないのにちょっかいを出されるようになり、最終的にとても過激に責め立てられたことで学校にいけなくなってしまう。

他のメンバーも、学校にいけなくなる理由は様々だけど、家族でもクラスメイトでも、ちょっとしたきっかけで、負の感情が生まれ、ただそこしかない世界にかじりつくために異常に反応してしまう。

そのあおりをくったメンバーたちは本当に不幸な子どもたちだった。

ただ、物語が進むに当たって、繊細ながらも打ち解けていく面々の成長が眩しい。マサムネが学校へ行ってほしいと頼んだ時に結果はどうなることかと思ったけど、あのマサムネが「来るって信じていたから、何かあったのかと思った」と言ったときは感動した。

何をもっても信頼してくれる人が1人でもいれば生きていけるんだよなと思った。

 

物語の謎となる孤城については、時間のズレに関しては少々感づいていたものの、最後に3月30日の謎が明かされたときはグッと物語に引き寄せられた。

最後もし記憶を継いでしまっていたらみんなどうなったのだろうか。アキはあのあと帰って無事に過ごせたのだろうかと、後日のことも含め、想像が膨らむ作品だ。

マサムネが言ってたナガヒサ・ロクレンはスバルだったのかな・・・?とか。

(↑後で検索したら明言されてないけど、そんな感じでした笑 六連星って昴の別名なんですって)

 

もしかしたら再読すると新しい気づきが得られそうな気もするので、文庫本ではなく単行本がほしいな〜と思いました。

いえ、先に辻村先生の「冷たい校舎の時は止まる」を積んでるんで絶対先に読むんですけどね・・・・w



のっけから失礼します

「のっけから失礼します」

三浦しをん

 

三浦しをん先生の作品は、小説しか読んでいなかったのですが、カドブンフェアの文庫版で長年エッセイを書かれていることを初めて知り購入。

きらきらした作品が多かったので勝手に三浦先生像を作り上げていた自分としてはかなりキャラの違いに驚かされました。まじで勝手な話ですが笑

 

本編は笑ったー!という印象。

家からあまり出ない?小説家の方が、なんでこんなに面白おかしい日常を送れるのだろう。友達も家族も面白い人が多くて羨ましい。笑

多少の盛り表現はあるのかもしれないけど、所々の( )のツッコミとかに時代とオタクを感じました。

あわせて推しへの情熱がほとばしっていました。私もオタクなのでよくわかります・・・

この人面白い人だったんだ・・・!?

上記の通り作品しか読んだことがなかったのですが、ラノベっぽいのもかけるし、切ない文学風のものもかけるし、とても器用な人という印象だったけど、おもしろオタク風のお姉さんという印象になりました。(失礼)

同じ独身として結婚に対するサバサバしている感性について詳しく知りたい・・・私も年を経ればそういう考えになるのかしら。

 

エピソードとしては、特に弱腰ダース・ベイダーでめちゃくちゃ笑った

弱腰の意味もダース・ベイダーの意味も秀逸すぎませんか・・・

あとは近松門左衛門のことをもんもんって読んでるのが、可愛い。もんもんも、三浦先生もかわいい。

 

量的にもとても読み応えのあるエッセイなので、通勤の時にちまちま読んでも良かったなと思った。なんかすごく元気になれそう。

でも多分、朝井先生のエッセイと同じで、「笑ってはいけない通勤電車」と化すとは思うけど。笑

 

三浦先生の小説はあと何冊か積んでしまっているけど、読み終わったらこちら以外のエッセイを読んでみようかなと思いました。

のっけから〜の原稿がたまったら続編も楽しみにしています。



そして誰もいなくなった

そして誰もいなくなった

アガサ・クリスティ

 

いわずとしれた名著だけど、一度も読んだことがなかったので、折角の機会だしと思って購入。

一応好きなジャンルはミステリーなので、コナン・ドイルのみならず、アガサ・クリスティやジョン・ディクスン・カーとかあたりは読んでおいてみたいと思っていたのでした。

結果、色褪せなさすぎる素晴らしい(という言葉で表現するのが悔しいくらい)名著でした。

 

シチュエーションはベタベタだけど、、、と思ったけど一瞬で、「っていうかこれが元祖なんだな!?」ってハッとさせられた。

十角館も、金田一オペラ座館殺人事件も、陸の孤島系はここに端を発しているということです!?!?

そう考えるとアガサ・クリスティの凄さをひしひしと感じる。

 

自分の推理力が0なので、犯人の最後の独白はまじでありがたかった。

でも瓶に入れて海に放り投げられては、これは迷宮入りしたんだろうな〜って感じも想像させられて後味がグッと引き立つ。

勝手にアームストロング先生に肩入れしていた(単純に考えると一番怪しいし状況的にも犯行がしやすいベストポジション)けど、最終的に誰もいなくなっちゃうから途中からとても残念でした。何だこの感想。

 

殺す順番まで決めて恐怖を味合わせるなんて、犯人は鬼畜だけど恐ろしいほど冷静で理性的だ。

そこもまた狂気なのかもしれない。

訳者の旨さかもしれないけど、現代でも余裕で通じるトリックの面白さや、キャラクターの個性が出ていて、しかもきれいに短めにまとまっているのが、一つの作品として美しい。

解説の赤川次郎先生も同じようなこと言ってたけど、それを読む前に私も思いました!思ったんです・・・!w(謎の言い訳)

本当に実感として面白いミステリなので、興味あって読んでいない方にはぜひ読んで楽しんでほしい。

 

ちょっとアガサ・クリスティの味をしめてしまった感じがあるので、引き続き著者の作品を読んでいきたいけど、著者なんと100作品以上書いているようなので、積読常習者の腕がなりますね(?)

 

 

丸の内魔法少女ミラクリーナ

「丸の内OLミラクリーナ」村田沙耶香

 

タイトルに引かれたけど、その著者を見て意外で驚いたので、反射的に購入してしまった一冊。 ※勝手なイメージです。

 

日々のストレスをごっこ遊びで受け入れ、表に出さない主人公が素晴らしい。

一見おかしいようでいて、立派なストレス昇華手段だと思う。

現実社会を生きていて、さまざまな理不尽を正面から受け止めるのはあまりも痛い。

それを空想や別の自分になりきることで正面から立ち向かわずに迎えることは、良い戦い方だし一種の手だ。

人には人の捉え方や解決の方法がある。他人に迷惑をかけなければ、(自己完結していれば)それがどんなものでも良いんじゃないかなと思う。

ただ、レイミの彼氏は主人公に無茶振りをされたことで、ストレスを他者を巻き込む「偽善」で昇華し始めた。これは自分に酔って怒りを撒き散らしているだけで、全て自分のため。

という以前に思考や行動がクズすぎたけど・・・

 

子供の頃の素直できれいな「善」を信じる心を大事なものというレイミに純粋さを感じた。また二人の関係性にノスタルジーを感じ、感極まってしまった。

倫理観を問うのにコミカルな雰囲気が読みやすく、とても良かった。

本作は短編集だが、表題が一番好き。

 

秘密の花園

理想と現実のギャップを埋めるために汚い現実を直視しようとする主人公。その発想の異常性に目が離せない。

「無性教室」

性が自由になった世界の話。最終的に交わることをせずにパートナーになるとしたら、何を友情、何を恋と呼ぶのだろうか。

筆者は「恋」という感覚をとても純粋できれいなものとして捉えている気がする。恋は最終的に性欲に繋がっているのではないのかな。愛と欲望についての哲学的な問いかけに感じた。

 

「変容」

これな。という感覚以外何ものでもなかった。(本編に乗じて)

主人公のうらしまたろうっぷりについてはジェネレーションギャップで覚えがあるし(本編は世代関係ないけど)、その中で仲間に出会えたときに感じる高揚感についても共感できる。

なにより最終的に感情が言葉にハマったときの、それしか言えない感じがよく分かる。

(私語彙力ないので・・・w)

第3者の視点である読者からみると、とても異常で狂ったような場に見えたけれど、現実世界には実際にこういった「創り出された」ものがないとは言い切れないところが、恐怖心を煽ってエグかった。

 

著者の現実とSFの隙間のような世界観と、現実社会への風刺とまでは行かない投げかけが好き。

短編にこんなに問いかけを詰め込めるってすごい。

著者の本は他に2冊ほど購入済みなので、ゆっくり丁寧に読んでいきたい。

 

 

おいしいごはんが食べられますように

「おいしいごはんが食べられますように」 高瀬 隼子

 

芥川賞受賞作品とのことで手に取った。

職場の出来事を書いた日常小説なのに、すごく心を動かされる。

私は二谷の心情がよくわかる。そして押尾さんのムカつきもわかる。

 

弱いもの、弱く見せられるものが勝つ。この構図がとても現代的。

弱くて「支えられなくてはいけない」とされる人が、「頑張っている」人からすると怠慢でずるく感じる。

私も押尾さんのそういう理不尽さは感じたことがある。ただし、弱いものには優しくすべしという無言の倫理観が、そこに圧をかける。

しかも最低限の規定の範囲内であることも、なおさら不平を言えない状況を生み出している。

この「頑張らなくてはいけない」「できる人が支えなくてはいけない」という暗黙のルールがこの社会には確実にあり、他に迷惑をかけてはいけないと感じる真面目な人ほど、それを過敏に感じ取り、そのように行動してしまうんだと思う。

 

最近、自分もそういったことを思いつつも、本当に頑張っても手を借りないと行けない人か、そうでないかは、結局の所他人にはわからないと思うに至ったんだけど。

 

またそれに対してのどこかみんなの当たり前に冷めた感情も、自分の無意識に働きかけるところだと思った。

 

二谷の食べる行動に対しても、これは完全に個人の感覚の問題だけど実感としてわかる。

食べる行為が人間に必要ということは生物学的に当たり前だけど、そこへの追求が果てしなさすぎてついていけない。

「美味しい」という感覚は幸福をもたらしてくれる。

それば事実であるが一方でちゃんと食べなければいけない、という丁寧な暮らし的な考えも一種の無言の圧力だ。

極論を言うと危険なものかを判断できるすべや、必要栄養素を摂取できるすべがあれば、味覚をそこまで満足させる必要があるのか、、、

 

いえ、好きなものとか食べたいものとかちゃんとあるんですけどね。

二谷の気持ちわかるんです。

これも意外と他者と共有しづらい(意見として言い出しにくい)圧を感じる。。。

 

当たり前に欲していると思い込まれること、常識とされることに対し、アンチテーゼを訴えることの難しさ、口に出すことすらできない空気。

この感覚が小説内でうまく表現されていて良かった。

 

余談だけど、フジさんの「みんな誰もが自分の働き方が正しいと思っている」という言葉が私にもとても腑に落ちた。

それぞれのキャパや感性はその人の中では確実な真なんだよね。外部から見るともっとできるじゃんと思うけど、限界がそこまでしかないということ、または限界までやる意味がわからないということなんだよね・・・

その考えに至るまで、私はかなり時間を要したけども。

 

狭い会社内の出来事で話は進むけど、このどこでも共通する価値観、倫理観の「違い」が表現されていて良い作品だなと思った。

短い中にグッとつまっていて、問いかけてくる。芥川賞の受賞作ってこんな感じの作品が多いのだろうか?

だとするとすごい好きな感じなので、他の受賞作も読んでみようかな・・・とか思いました。笑

積読紹介(1)

年明けに、ブログ更新するぞーとか積読消化するぞーとか書いている人がいたんですよ〜(クールポコ感)

 

というわけで、決意に行動が全く伴っていないので、ならばいっそそれすらもネタにしてしまえばどうかと、積読本を消化ならぬ紹介していくことにします。

 

(1)さくらえび さくらももこ

もものかんずめが面白すぎたので購入。著者のエッセイはいっぱいあるので、いまから読むのがワクワク。さくらという著者の名前が入っているので、とりあえずこれも読んでみようと思い手に取りました。

ちなみに新潮のプレミアムカバーで購入です。

毎年新潮文庫のフェアには参加するんだけど、プレミアムカバーに手を出せなかった私・・・ついにほしい本のプレミアムカバーが出たので買いましたけども。これは集めたくなるやつ・・・!笑


(2)かがみの孤城 辻村深月

辻村先生の作品を一度も読んだことがなく、別の作品も積読しているのですが、こちらは有名な作品で一度は〜!と思って購入。

ちょうど最近映画になったので、ネタバレ引かないように情報を遮断した記憶があります。

上下巻なので長いのかもしれないけど評価が高いので超楽しみ。

ファンタジーっぽいので、ファンタジー欲が高まったときにガッと読みたいと思っています!

 

(3)読んでいない本について堂々と語る方法 ピエール・バイヤール

正直タイトルに惹かれました。笑

読んでない本について語るつもりはないけど、一種の要約術かなと勝手に想像。

関係ないかもしれないけど、本を読むのに人生の時間は足りなすぎるからなぁ。かつ速読をするのは理解の遅い自分としては、本に失礼と思う時があるので。

読んでない本すらわかる(っぽくなる?)っているのはどんな感じなんだろ〜!

 

(4)ただいま神様当番 青山美智子

青山先生の作品は本当に優しさとすれ違いのちょっと切ない感覚と、最後のハッピーエンドが読んだ人を幸せにしてくれるものが多くて、読むと絶対泣くというお約束が私の中にあります。

最終的に短編が全て繋がっていて最後は謎解きのように伏線が回収されるところも魅力的です。こちらの「ただいま神様当番」も同じ感じなのではとわくわく。

余談ですが、これを読んだら多分、先生の既刊作品は全部読んでいるかも・・・?

木曜日にはココアをから、一気に立派なファンになってしまいました。笑

 

(5)終末のフール 伊坂幸太郎

有名な一冊だと思います。読んだことないんだけど。笑

伊坂先生は文体が独特なので、読んだあとに理解があっているかの再読欲がすごい。

一回読むとあとも引くので、ちょっと後回しにしがちなんだけど(笑)、アイネ・クライネ・ナハトムジークも積んでるので、早めに読めればと思います!

伊坂先生もどんでん返しがあるイメージなので、読んで楽しいのではと期待しています!

 

いま時点で積読本は(電子書籍合わせて)合計111冊。

年明けに116冊といっていたのですが何だったのかという感じですね。

ただし実際には、ここ7月中旬まででなんと111冊(同じ!)読了しているので、確実に減らしては買って、を繰り返しているんですね・・・。

やはり人間というのは、本の購入欲には勝てないものなのですね・・・(?)

 

たまにこういった形で積読も紹介していきたいと思います。

本当は読書感想が主にしたいところですが。

 

なによりSNSにダイブすると反射的に買ってしまう衝動をなんとかしないといけないですね。。。

(白目)

また後日更新しますが、積読をおこもりで解消するプランで湯河原まで行ってきますのでぐっと減らせるといいな・・・!

いかがなものか

「いかがなものか」  群ようこ

 

※長文の感想文をしばらく書いていないので、久々な感じがするのと同時に、ブログの構成を少し変えてみようと思って試みる次第です。

 

さくらももこさんの「もものかんずめ」を、ハイパー遅ればせながら最近読ませてもらった。

エッセイはあまり読まないジャンルなのだが、(朝井リョウさんのエッセイは面白すぎるエンタメとして全て読んでいる)よく読まれているということに納得する面白さと読みやすさ、またちょっと世の中を皮肉る感じが、私のツボにはまった。

そこで、以前友人に進められた著者の本が、集英社文庫のフェアで平積みされているのをみて、軽い気持ちで手に取ってみた。

 

読み終わった感想はまず、「わかる〜って感じ。」である。

決して優しくない(?)意見を述べた内容だが、ちゃんとそこに著者の芯がある。

まだ弱った心が回復しきっていない自分(別の記事に書くかも)に、「私はこうである」という自己肯定感、というか、この場合は私はこう考えますけど何か?みたいなどっしりと構えた姿勢が心地よかった。こうありたいとも思った。

具体的なところで言うと「図書館」「不倫」あたりが特に、かゆいところに手が届いた感じがあった。

図書館に関しては、読んだ日に、ちょうど図書館で読みたい本がなかったり、閲覧室の椅子が足りなかったりとがっかりしてきたところだということもあったからかもしれない。

大勢に貸すことを前提とするシステムの施設であるのだから、その本を誰が触ったものかわからないという意味で「汚い」と消毒するのってなんかちょっと違う。

優先順位も違うし、その機械の導入経費があればもっと快適にできるじゃんという意見にも賛成。笑

ついでにサラッと書いてあったクレーマーに過度に謝る姿勢についても共感。これ思ってても口には出せないからなぁ。

 

不倫の謝罪会見については、もはや幼い頃から不思議で、多分家族や友人にも言い尽くしているし、少なくとも周りの人もそういう認識の人が多いので、一体誰が、なぜ芸能人のスキャンダルに興味があるのか、むしろそっちの感性に興味がある。

そういう統計や調査ってないのだろうか。

 

文体は優しくないと書いたが、エッセイというジャンルは、かゆいところに手が届く、言葉にしてくれてありがたいといった感じの共感も、一つの魅力なのではと思っている。

 

そんなこんなで面白いエッセイを今後も探していきたいし、ちょっと魅力にハマりつつある。

もし面白いエッセイがあったらぜひ教えていただきたい。

 

夏は読書フェアが多いから、たくさん本に出会えて嬉しいなー。