むかしむかしあるところに、死体がありました。
読書動機
正直に言うと「タイトルに惹かれた」。これだけである。
表紙の絵もキャッチーだ。見たことのある昔話のキャラクターが、死体を囲んで驚いている。
ギャグテイストなのか、はたまた物語のオマージュなのか、興味をそそられるタイトルと表紙であった。
近くに赤ずきんちゃんの表紙の「赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。」もあったが、シリーズ第一作目とのことで当書を購入してみた。
感想
読んでみると、キャラクターや登場する道具はそのままで、話がミステリーになっていくものであった。ギャグではなく、本格ミステリーである。
だいたい話の流れも原作に近いものの、(キャラクターが原作の時間を体験したあとだったりその流れだったり)そこで殺人事件が起こるので、登場する人間以外の犬や鶴、亀、鬼や不思議道具(表現がいまいち・・・打ち出の小槌などのことを言いたいのです)を推理に組み込む作りになっている。
これがとても新鮮に感じた。
犯人たちには鉄壁のアリバイがまずある。それを不思議な道具を使ってアリバイを崩したり、はじめの話がよく読むと伏線になっていたりと、昔話の世界観をうまく活用してトリックが成り立つのがおもしろかった。
また、全部で5本の話が載っているが、すべて物語の構成や進み方が異なるので、読んでいて飽きが来ない。個人的には、2作品目の花咲死者伝言で(これはうっすら犯人に気づいてしまったものの)犯行動機が生々しく残酷性を感じたのと、最後の絶海の鬼ヶ島が、ホラー要素もあってぞくぞくした。
考えながら読むとちゃんと伏線や引っかかりに気付ける作りになっているので、推理しながら読むのも面白いと思う。
どうでもいいが、鬼たちが自分たちのことを1頭って数えるのが妙におかしかった。笑
今後につながること(まとめ的なもの)
積読があまりにも多いのでいつになるかは不明だが、続編を読んでみたいと思っている。
日本昔話的なものも良かったが、赤ずきんの方はどうやら西洋の童話を元にした作品らしく、かなり期待が高まる。
また、もう一作、続編も発売されているようで、こんなにも読みたいシリーズが刊行されていて楽しみがあるのが嬉しい。
ただのミステリーだけではなく、皆に共通の昔話というツールを使うことで、納得感を共有できるという斬新な発想のミステリーであった。
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