BUTTER
【読書動機】
書店で平積みされていたので気になった。実際の事件を題材にした小説という内容にひかれ購入。
【感想】
読み終えた際の感想は、色んな角度から感想が湧き出て、とても一言では表現できない。ということだ。
その中でもやはり一番刺さったのは”女性”性の世間評価と、それに振り回される女性についてだった。
働くにしても、家庭に入るにしても、それぞれ表と裏で「女性としての」正解を要求され、息苦しくなる。そういった他者の視線の為に、自分を肯定することが難しい主人公の葛藤がリアルに伝わってくる。
そして主人公には、最初「カジマナ」はそういった枷を解き放った人物ように見えるのであったし、自分の女性像や女性らしさ、また欲に対する従順さを迷いなくぶつけてくる。
主人公が学生時代から自分の「役割」を果たすために、ある種禁欲的に踏み入れなかった食の領域を通して、自由な生き方をしているようにふるまい、翻弄する。
カジマナの宿題をこなしているときの主人公は、とても危うく思えたし、どんどんのまれていっている感覚が、恐ろしかった。
最終的に取材等を通じてカジマナの等身大の姿を知ることで、彼女の罠(だったのか、裏なくああいったことができる人物であったのか不明だったけど)から逃れて自分の本当にしたいことに気づくことができた、というところはスカッとした。
また親友の危うさにもはらはらしながらも、それぞれがかすかな答えを見つけられたことがうれしい最後だった。
【まとめ的なもの】
女性の他者や世間からの無言の要求や価値付け、そういったものは表だって言えない世の中になっているが、そいうった「空気」は根強く、いまだに意識をするしないにかかわらず、その型にはまろうと一生懸命になっている女性は本当に多い。(それはもちろん男性にもいえることだが)
そしてその社会の中で「自分らしさとは」という問いに気づいてしまうと一気に息苦しくなるのだと思う。
昨今ジェンダーを意識しようとする声が高まる中、いまだにこの国では昔からの「常識」が根を張っていると感じる。
この作品は是非色んな方にお薦めしたいと思った。
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