社会人の読書感想文

読んだり聞いたりした本の感想などを自由にかいてます。

海と毒薬

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読書動機

実家の本棚に置いてあった本だった。

著者の名前も聞いたことがあるし、重そうなテーマであったため、基本的には明るいテーマかミステリーが好きな私は読まないジャンルということもあり、久々にこういう雰囲気の本を読んでみようと思った。

感想

初めはとある町に越してきた住人の視点から始まる。

その町にある診療所の医者は、腕は良いが変人として有名であった、というところで、そこまでは日常の一部である。しかし、その医者の過去を少しずつ知っていき、そのあたりから、とある事件の関係者視点での話がスタートする。

今の日本ではありえない非人道的な事件であるが、実際の事件であったというところに衝撃とリアリティがある。

ただただ置かれた環境は人間をいかようにもしてしまうのだと恐怖を覚えた。

戦争という過酷な環境は、じわじわと他者や命を侵食していく毒薬のようだ。

その毒に侵された人間は、心の痛覚が麻痺していくように感じた。

そして海の描かれ方も、暗く深い、そして波音によって存在を示す、なにかの比喩のようだった。

実際に海も毒薬も何かを暗喩しているのだろうが、答えははっきりとしていない(様に感じた。)。読んだ人によって捉え方が違うのではないかと思うので、ぜひ他の人の感想も聞いてみたい。

 

今後につながること(まとめ的なもの)

やっぱり戦争の話は苦手だ。しかしそれが日常であった人々がいて、実際の事件とリンクしているというのはリアリティをもって受け止めることの助けとなった。

現代日本で生きていると、生き死にがどこか遠くの特別な存在になっている気がするが、死とは、とても唐突で絶対的な存在であり、決して逃れることができない。

命は対等で、どんな人も他人に奪われていいものではない。

同種同士で当たり前のこのルールが破綻しない世界が幸せなのだと改めて認識した。

 

たまには自分の読まないジャンルに手を出すと、新しい気づきや学びがあると改めて感じた。

今後も節操なく色んなテーマの本を読んでいきたい。

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