コンビニ人間
【読書動機】
純粋にタイトルに惹かれた。芥川賞受賞作ということで、人間の深層心理的なものが比喩で表されている、考察が必要な作品なのかなと(勝手なイメージ)思ったけど、分量が少なそうなので気軽に読めそうと思った。
【感想】
これはすごい作品・・・何がすごいかは以下の通り。
コンビニの代謝は社会の代謝の縮図のよう。「変わらない」ことがこんなにも矛盾と排斥をはらんでいるなんて考えたことがなかった。
同調圧力が、主人公の「異端さ」によって第三者目線で描かれたことで、理解されやすく描かれていると思う。私も社会の「あたりまえ」という同調圧力を感じながら生きているので、この違和感に覚えがあり、共感できるところが多かった。
「当たり前」「常識」という暗黙のルールが存在する世界に、そのルールの意味が理解できない、馴染めない主人公が唯一「当たり前」に振る舞える場所がコンビニであったんだなと思うと、やはり最後の衝動はなるべくしてなったのだと感じた。
常識や倫理観は、人間の世界になければただの動物の世界になってしまう(人間はまず動物であるため)。理屈だけは白羽の言う通り、人間の本質は縄文時代から変わっていないのかもしれない。単独では生きていけない人間は、組織を作り、はみ出したものを排斥する。
そうすることで自分たちの生きる場所である「ムラ」を守っている。
近年、多様性を認め合うことが良いとされていながらも、やはりまだ既存の「ルール」からの逸脱を看過できない意識が少なくとも日本にはあると思う。もともと島国で、そういった傾向の民族でもあることも要因かもしれない。
白羽の言っていることは的を射ているところもある。ただし、その反面彼自身もそのルールに深いところで縛られてもいるところが残念なところである。
社会の価値観どころか労働してお金を得るというルールにも適合できない彼は、文句しか言わない。その上、自分が批判する社会のルールの則った価値観で主人公を罵る。
でもたしかに実際は、彼一人の力では何も変えることができないので、たとえなにか行動を起こしてもムラの掟に従う他ないのだけれど。
社会に溶け込むのが難しい人はどうすればいいのだろうか。異物として排斥されたあとは、行き先などないんじゃないか。
もう一つ、なぜひとはゴシップが好きかという理屈だけど、結局は人間は種を残すように遺伝子にインプットされている、種を残すことについて関心があるのは当たり前、という話に妙に納得した。
私はどうでもいいことだと心底思うが、ゴシップが売れ続けるのはそういった根拠があるのかもしれない。
この社会は異物たちを排斥し、人間の動物的部分を着飾りながらも肯定して出来上がってきた。結局その2つが、「異端者」「弱者」が生き残りにくい環境を生み出しているのだと思う。
こういった違和感をストーリーにし、きれいに問題提起してている店でとてもすごい作品だと感じた。
【今後に活かしたいこと】
ちょっと自分にひっかかり過ぎたところもあるので、今後も作者の小説を読んでいきたいと思ったし、ちょっと友人にも引っかかりそうなので、おすすめしたいと思った。
読みたい作者が増えて嬉しい!