むらさきスカートの女
タイトルに惹かれてこうにゅうしました。
一見日常のありふれたストーリーのようでいて、女性社会の陰湿さや語り手の孤独
そして物語を繰り返す様な気味の悪さが感じられる。
むらさきスカートの女を気にかけるあまり、まるでストーカーと化してしまう語り手。
その執着がまず気持ちが悪くて引き込まれる。
一方で、徐々に冷やかしの目で見られていたむらさきスカートの女は、立場が好転していく。それに対し語り手はもの寂しさを感じ、それでもなお友だちになりたいと言う気持ちが揺るがない。
そしてむらさきスカートの女への思い込みが、最後の展開へと繋がっていく。
この物語は、感想が難しいです。
様々な問題提起や感情が生まれる仕掛けが感じられて、人によって印象的な場面が異なるのではと感じました。
シュールという言葉が正しいかは不明ですが、淡々と進む場面展開の中に、読者によるツッコミができるポイントがあるという読者が自由な作品でした。また、語り手が判明した時も、水テリー特有の驚きがあり、心が動きました。
でも、私はやはり最後の気味の悪さが印象に残しました。
「むらさきスカートの女」という響き自体が都市伝説をイメージさせるタイトルであり、話の流れも一人の女性が変わり、幸せを掴んでいく様でいて転落する話の様に感じた。さて、その後に「黄色いカーディガンの女」はそれに続いていくのか。。。といった後々の想像力を掻き立てるラスト。
特に上司の弱みを握ってお金を借りるシーンも暗い部分へ落ちていく様な恐ろしさを彷彿とさせます。
特別ではない女性の日常に潜むミステリーを読む事ができました。
ところで、文庫版に収録されていた作者のコメントですが、もっと調子に乗って良いんだよと励ましてあげたくなりました。笑
謙虚で世の中を俯瞰しているところに好感が持てるものの、こんなにも単純と見せかけて複雑なストーリーを生み出す事ができる人なんてそうそういないと思います。
ペースを守りつつ、是非物語を書き続けてほしいと思いますし、先生の他の作品も読んでいきたいと思います。
・・・という最後に謎エール。笑