社会人の読書感想文

読んだり聞いたりした本の感想などを自由にかいてます。

13階段

13階段」 高野和明

 

とにかく引き込まれて、一気に読める作品。

久々にこういった感覚を味わった~!という感じで読了後は若干興奮気味だった。笑

 

内容は、冤罪と思われる死刑囚の容疑を晴らすために、刑務官と前科ありの青年が組んで調査を行うもの。死刑囚の断片的な記憶をもとに、さまざまな人に話を聞いていく中で、事件の真相が表れていくとともに、2人の過去や思いも明かされていく。

人を死をもって裁く立場の苦しみと、償った後でも付きまとう罪の重さや影響が、元通りにはならない現実を突き付けてくる。

その中で、苦しみながらも、二人は真実を見つけることになる。

 

死刑制度、出所後の社会復帰の難しさ、罪を償うとはどういうことなのかを考えさせられる作品だった。

最後の結末はつらいものがあるが、現実でもすべてがハッピーエンドになる訳ではないので、リアルだった。これはこれで後味も含めていいのかもしれない。

刑務官の南郷さんは優しすぎるのかもしれない。

ただ、普通は人の死を前に平気な人なんていないんだけど・・・

 

ミステリーとしても、サスペンスとしても、人情話としても、とても楽しめる素晴らしい作品と感じた。

ちょっと時間があいて書いたため、感想が少なかったので、もしかしたら追加していくかもしれません。



 

もものかんずめ

言わずとしれた超有名なエッセイ。

中学生の時に何故かうちわで流行ったものの、私は読むことはなかった。

さくらももこさんのギャグが面白いことはよく知っているため、朝井リョウ氏のエッセイで腹筋が鍛えられるくらい笑った私は、中学の時と比べ物にならないくらい興味しんしんで手に取ることになりましたとさ。笑

 

読んでみると本当に面白い。

面白い要素というのは色々あるけれど、言葉選びや比喩の面白さは確かに抜群だが、なんといっても、その話自体がすでに面白いのである。

こんなにおもしろいことが一人に人に起こるのかといった具合に面白いので、これはもう天から与えられているものが違うのだと思った。

話の中で特に面白かったのが、「明け方のつぶやき」「恐怖との直面」「無意味な合宿」「意図のない話」・・・って半分くらい上げてしまったが、まあどれも選べない。笑

意図のない話の青山のカフェがシュール中のシュールでもう(引きが)強いなって思いました。

ハイテンションの爆笑も面白いんだけど、さくらももこさんは客観的に見た第三者的なツッコミが冴え渡っている人だと思う。普通ならスルーするところを、テンション低めに、「言われてみれば」という内容で突っ込む。

だから日常の中でこんなにおもしろい話が尽きないのだと感じた。(でもそもそも引きがいいというのが大前提。)

 

エッセイのいいところは前後関係を考えずに読めて、単発で面白いところだ。

そして何気ない日常にちょっと批判(この場合ツッコミの方があっている気がするが)を与えることで、生活を俯瞰して見させてくれる。

私も書いてみたいけど、ネタを探すこの「眼」は一朝一夕では行かないな。

他の作品も読みつつ、私も生活にツッコミを入れられるような見方ができるようになりたい

 

今後

自分でエッセイ書いてみる。・・・それって日記では・・・?と思いつつ。笑

さくらももこさんのエッセイはたくさんあるので、この他のものも読んでいきたい。

さくらももこさんに興味を持ててよかった!



 

コンビニ人間

 

【読書動機】

純粋にタイトルに惹かれた。芥川賞受賞作ということで、人間の深層心理的なものが比喩で表されている、考察が必要な作品なのかなと(勝手なイメージ)思ったけど、分量が少なそうなので気軽に読めそうと思った。

 

【感想】

これはすごい作品・・・何がすごいかは以下の通り。

コンビニの代謝は社会の代謝の縮図のよう。「変わらない」ことがこんなにも矛盾と排斥をはらんでいるなんて考えたことがなかった。

同調圧力が、主人公の「異端さ」によって第三者目線で描かれたことで、理解されやすく描かれていると思う。私も社会の「あたりまえ」という同調圧力を感じながら生きているので、この違和感に覚えがあり、共感できるところが多かった。

「当たり前」「常識」という暗黙のルールが存在する世界に、そのルールの意味が理解できない、馴染めない主人公が唯一「当たり前」に振る舞える場所がコンビニであったんだなと思うと、やはり最後の衝動はなるべくしてなったのだと感じた。

常識や倫理観は、人間の世界になければただの動物の世界になってしまう(人間はまず動物であるため)。理屈だけは白羽の言う通り、人間の本質は縄文時代から変わっていないのかもしれない。単独では生きていけない人間は、組織を作り、はみ出したものを排斥する。

そうすることで自分たちの生きる場所である「ムラ」を守っている。

近年、多様性を認め合うことが良いとされていながらも、やはりまだ既存の「ルール」からの逸脱を看過できない意識が少なくとも日本にはあると思う。もともと島国で、そういった傾向の民族でもあることも要因かもしれない。

白羽の言っていることは的を射ているところもある。ただし、その反面彼自身もそのルールに深いところで縛られてもいるところが残念なところである。

社会の価値観どころか労働してお金を得るというルールにも適合できない彼は、文句しか言わない。その上、自分が批判する社会のルールの則った価値観で主人公を罵る。

でもたしかに実際は、彼一人の力では何も変えることができないので、たとえなにか行動を起こしてもムラの掟に従う他ないのだけれど。

社会に溶け込むのが難しい人はどうすればいいのだろうか。異物として排斥されたあとは、行き先などないんじゃないか。

 

もう一つ、なぜひとはゴシップが好きかという理屈だけど、結局は人間は種を残すように遺伝子にインプットされている、種を残すことについて関心があるのは当たり前、という話に妙に納得した。

私はどうでもいいことだと心底思うが、ゴシップが売れ続けるのはそういった根拠があるのかもしれない。

 

この社会は異物たちを排斥し、人間の動物的部分を着飾りながらも肯定して出来上がってきた。結局その2つが、「異端者」「弱者」が生き残りにくい環境を生み出しているのだと思う。

 

こういった違和感をストーリーにし、きれいに問題提起してている店でとてもすごい作品だと感じた。

 

【今後に活かしたいこと】

ちょっと自分にひっかかり過ぎたところもあるので、今後も作者の小説を読んでいきたいと思ったし、ちょっと友人にも引っかかりそうなので、おすすめしたいと思った。

読みたい作者が増えて嬉しい!

むらさきスカートの女

タイトルに惹かれてこうにゅうしました。

一見日常のありふれたストーリーのようでいて、女性社会の陰湿さや語り手の孤独

そして物語を繰り返す様な気味の悪さが感じられる。

むらさきスカートの女を気にかけるあまり、まるでストーカーと化してしまう語り手。

その執着がまず気持ちが悪くて引き込まれる。

一方で、徐々に冷やかしの目で見られていたむらさきスカートの女は、立場が好転していく。それに対し語り手はもの寂しさを感じ、それでもなお友だちになりたいと言う気持ちが揺るがない。

そしてむらさきスカートの女への思い込みが、最後の展開へと繋がっていく。

 

この物語は、感想が難しいです。

様々な問題提起や感情が生まれる仕掛けが感じられて、人によって印象的な場面が異なるのではと感じました。

シュールという言葉が正しいかは不明ですが、淡々と進む場面展開の中に、読者によるツッコミができるポイントがあるという読者が自由な作品でした。また、語り手が判明した時も、水テリー特有の驚きがあり、心が動きました。

 

でも、私はやはり最後の気味の悪さが印象に残しました。

 

「むらさきスカートの女」という響き自体が都市伝説をイメージさせるタイトルであり、話の流れも一人の女性が変わり、幸せを掴んでいく様でいて転落する話の様に感じた。さて、その後に「黄色いカーディガンの女」はそれに続いていくのか。。。といった後々の想像力を掻き立てるラスト。

特に上司の弱みを握ってお金を借りるシーンも暗い部分へ落ちていく様な恐ろしさを彷彿とさせます。

特別ではない女性の日常に潜むミステリーを読む事ができました。

 

ところで、文庫版に収録されていた作者のコメントですが、もっと調子に乗って良いんだよと励ましてあげたくなりました。笑

謙虚で世の中を俯瞰しているところに好感が持てるものの、こんなにも単純と見せかけて複雑なストーリーを生み出す事ができる人なんてそうそういないと思います。

ペースを守りつつ、是非物語を書き続けてほしいと思いますし、先生の他の作品も読んでいきたいと思います。

 

・・・という最後に謎エール。笑

 

2023年あけましておめでとうございます。

2023年、あけましておめでとうございます。

すっかりこちらのブログの更新をしておらず、前回から半年も更新していなかったことに驚いています。

といってもSNSにもそんなに感想をあげなくなってしまっていたので、なかなか習慣化って難しいなーと感じるところです。。。笑

 

このブログは、昨年の年明けに本の感想をUPするために立ち上げたものなので、年が明けたこともあり、また心新たに感想をあげていきたいと思います。

 

あんまり目標を高くしすぎると続かないので、読んだ本すべてではなく、特に印象に残ったものとか、逆にこれは違う!!と思ったものとかを書いていけたらなと。

 

ちなみに、いま熱心に(?)積読を消化しているのですが、特に今年は紙の積読を集中して減らしていきたいと思います。

もちろん、よかった本は本棚に収納するのですが、その他の本はなるべく減らすようにしていきたい。なんせ引っ越すから。笑

そこでざっと自分の積読本を数えてみたところ、なんと116冊(一部電子書籍含む)。職員厚生で補助が出るので、何年か調子に乗って買っちゃったんですね~・・・

内容にもよりますが、1か月15冊くらいのペースで崩していけたら理想です。

もちろん大切に読むことが大前提ですけどね!

 

まだまだ買っていないけど読みたい本もあるし、別の趣味もあるのでぼちぼちペースになるかもですが、積読本は宝の山だと思っているので、まだ見ぬ出会いにわくわくしつつ行動です!

 

明日またブックオフに行くことは内緒で・・・笑

 

今年もよろしくお願いします。

 

神去なあなあ日常&神去なあなあ夜話

 

【読書動機】

林業は東京で暮らしているとなかなか触れることのない職業である。その林業と、田舎の暮らしを、都会の若者がすることになる、という新しい展開に興味をひかれた。

三浦しをん先生の作品だったということも大きい。

 

【感想】

〇なあなあ日常

都会で生きてきた主人公が、林業に携わりながら自然と共に暮らす人々の日常を体験し、成長していく物語。

神去村では、山や自然への畏敬をもちながら、なあなあ、という中庸な言葉や考えを持った暮らしがある。

主人公は、個性豊かな登場人物と、林業という自然と共にある仕事をする事で、初めは戸惑いつまらないと感じていた生活に、良さを見出していく。そして林業にやりがいを感じつつ恋も仕事も頑張っていく。

古き良き、と言っていいのかわからないが、村には昔の日本を感じさせる雰囲気があり、一生懸命に、でも「なあなあ」と言いながら自然や神に感謝して生きていく文化が懐かしく描かれている。

 

基本的にはコミカルなやり取りなので、楽しく読めるのもみそ!

 

時には自然に命の大切さや、人間も自然の一部であるということも教えてもらう祭事等もあり、現代が包み隠している生や死や生き物としての役割を思い起こさせてくれる物語だった。

 

〇なあなあ夜話

前回の続編である。

前回と同様に、主人公が書き手となって語りかける口調もとても親しみやすいので、読みやすく私もその場で体験しているような気持ちになった。笑

神去村のメンバーは相変わらずみんな「なあなあ」な人たちが多くて、読んでいて心が癒される。神去村の自然や四季を感じさせる描写が、読んでいてもイメージしやすく、とても爽やかでそちらにも癒された。

村の成り立ちや昔話、またヨキや清一さんの過去についても明かされる場面もあり、今回は、より村の歴史や人が掘り下げられたような内容であった。

村の過去の事故については、今のメンバーが明るく人がいい反面、重くつらい出来事で、涙してしまった。。。

 

連綿とつながる、村や人、自然。慣習などでそれを後世にいかしたり残そうとする人たちの営みが、尊く、暖かかった。

 

【まとめ的なもの】

こんなに気持ちよく読めるのは、著者の書く文章の読みやすさもあるけれども、

登場人物たちの清涼さ、適度な「なあなあ」を読み手も感じるからではないだろうか。

壮大な話では無い代わりに、日常の人の生活が詳細に描かれていて、のんびり楽しい生活描写が、優しい気持ちにさせてくれる、ノスタルジックで心温まる作品であった。

またもし続編が出たら読みたいし(出なそうだけど)、先生の作品もまた読んできたいと思う。

 

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海辺のカフカ

 

読書動機

とても著名な作家の代表作品の一つであり、一度ちゃんと読んでみようと思っていた作品。

 

感想

著者の短編小説は読んだことがあったが長編小説は初めてである。

短編でもなかなか比喩的なことが多くて難解な作品が多いと感じていたが、(それ故、少し敬遠していた。。。)本著書は同じ難解なところが多いものの、次の展開が気になり、物語に入っていきやすくてグイグイ読めてしまった。

ただ、戯曲の引用やクラシックの知識が必要であったりと、ある程度教養がないと完全に意味を理解できないような気がするし、物語を味わい尽くすことができないのではないかと思い、自分にはそこがもったいないような気持ちになった。

 

特に印象的なのは、登場人物のセリフが哲学的で深いものが多かったことである。

もし蛍光ペンで印をつけたら好きなセリフに、かなり色がつくのではと思う。

特に好きな言葉はカーネル・サンダースの「すべての物体は移動の途中にあるんだ。(中略)全ての物事は液状的で多角的なものだ。1つの場所に1つのフォルムで永遠にとどまるものはない。宇宙そのものが巨大なクロネコ宅急便なんだ。」

全体的に事象の本質を悟っている人が多かった気がする。

 

物語は予言から始まる。作中でも触れられているが、はじめは神話のような展開だという印象であった。読み進めていくうちに、別の時代や場所へ舞台が移り、次の展開が予測できずにすっかり熱中してしまった。そして最終的には2人の主人公の別々だった展開が一つに集約されていく様が、読んでいて気持ちよかった。

登場人物も個性的であり、全員に何かしらの秘密がある。また、ファンタジーと現実の境目を行ったり来たりすることで、現実的なもの以外にも幾重にも秘密についての考察をふかめていくことができた。

個人の見解であるが、例えば、口は悪いが、ナカタさんを助けてくれたカーネル・サンダースは、人ではないといっていたので、なにか「運命を良い方向へ転換するもの」のメタフォジカルな存在であり、ジョニー・ウォーカーは反面、現実の生き物(猫たち)から命を奪い、ナカタさんに自分の命を奪わせることで、罪を植え付けている。「悪」のメタフォジカルな存在であるようだ。

登場人物の中では、淡白な人が多い中、星野青年は愛嬌があり、人間らしくて好きになった。

 

今後につながること(まとめ的なもの)

著者の作品はあまりにも有名なものが多い。短編小説のみで食わず嫌いしていたことを少し後悔している今、別の長編小説にも挑戦してみたいと思う。

1Q84を未だに途中で積んでいるのでそれだろうか・・・?)

ただ今のところ、ほぼすべての作品に長い性描写があり、毎作品そこがなにかの隠喩?なのか謎である。笑  若干外で読みづらいところが難点かも。

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